士農工商・犬・猫・研修医……というほど、一人前の医師を目指す研修医は、厳し
くツライ環境がとりまいている。
ふつうより2年も長く大学の医学部で学び、国家試験になんとか合格しても、医師
は医師でもヒヨコにもならない医師のタマゴ。
今度は大学病院の医療現場で、医師の見習いとして2年間も研修することになる。
もちろん、その2年間は無給だ。
では、研修医の仕事内容は…? というと、実地で覚える診療に研究室の雑用など
があるが、ま、早い話が、医療現場の小間使い…ってトコでしょうか?
教授・助教授・講師にただの医局医師、婦長に主任に看護婦…グーンと下がって、
チョッピリ気持ちがくつろげるのは、同じ年度に看護学校からデビューした新米看護
婦のみ…ということになる。
それでも新米看護婦は、一つの科に配属されるが、研修医は最初一年間1〜3ヵ月
ごとに、あっちの科こっちの科と回される。学校で知識は詰め込んできていても、始
めのうちは注射一本も打てない研修医。実際の医療現場では、あれやこれやと泣かさ
れることが多い。
そんなとき、やっぱり一緒に泣けるのは、慣れない医療現場で2年間共に一生懸命
戦う、同じ研修医と新米看護婦たち。研修医や新米看護婦が、それぞれ一人前の医師
やベテラン看護婦になっても、そのとき培った同期の桜的友情は、たとえ何年たって
も消えることはない。
ところで、大学病院の研修医は、臭い・汚い・金ない…の3Kと言われる。
オペ室では一番こき使われて、手術着のまま患者さんと共にICUに入り、術後を
徹夜で診て、翌朝そのまま自分の病棟に戻り、外来の患者さんを診る。
研修医は、そんな日々が一週間10日と続くことはザラだ。当然のことながら風呂に
も入れないし、一週間ぶりに風呂に入る研修医も珍しくない……。
少しでも仮眠をとろうとしても、医局では当直医が寝ているし、だいたい研修医の
眠る場所すら元々ない。
万年睡眠不足でモーローとしたままの研修医としてみれば、眠る場所ならドコでも
いい。そこらへんの床に新聞紙かぶって寝る研修医から、積み上げてあるストレッチ
ャー(患者さんを移送するために足の部分に車が付いている簡易ベッド)置場の一番
上の狭い空間で寝る研修医もいる。
しかし、いくら疲れていて眠たいからといって、ストレッチャーの上で目が覚めた
ら、すぐ目の前が天井とは、さぞやその研修医も驚いたことだろう……。
それでもやっぱり病院中の使いっぱしり的存在の研修医、いつでもどこでもアッと
いう間に眠る得意技は、一人前の医師になるという、若い情熱ゆえ……!?
これだけ苦労してる研修医だが、医師がダブついていると言われるこの世の中、今
となっては一人前の医師になったとしても、将来性があまりないカモ……。
ところで、ほかの一般病院ならともかく、大学病院の看護婦たちの間では、大学病
院の研修医が大学病院勤めの看護婦を奥さんにしたら、2年もしたら一家破産と言わ
れている。ま、それぐらい研修医は食えない、生活できないということでしょうか。
研修期間中、看護婦たちから”センセー”と呼ばれてはいたものの、実質は医療現
場の単なる使い走り……。しかし、2年間の研修期間が過ぎれば、今度は看護婦たち
の”先生”と呼ぶニュアンスも、見る目も微妙に違ってくる。
そして、医局の紹介で大学病院系列の総合病院などへ、晴れてバイトに行ける…と
いうものだ。週2〜3回のバイトでも、最低生活費は稼げるようになる。だが、医師
のヒヨコになっても、まだまだ忙しさの量は変わらない。
研修期間をすぎても、一人前になるには、まだまだ道は遠いのだ!
それでもモテモテお医者サマ
(ナンパ・フリンは当たり前ってホント?)
■セクハラ三昧のカン違い野郎
医師は、看護婦同様に白衣を着ると別人…3割かたアップして男前になる。
背広姿はフツーのオッサンでも、白衣を着るとなぜかキリッとした先生……。パー
ティーの席上、若い独身女性相手に「職業は医者で、ボク、まだ独身です」と言うだ
けで、タダの若者だったはずが、急に輝いて見えたりするから不思議だ。
”独身医師”という言葉と”白衣姿”には、若い女性の心を動かすマジカルパワーが
あるのかもしれない。もしかして、ナンパが得意だという医師は、そのことを十二分
に理解しているからこそ、上手に女性たちと遊べる……!?
医師といえば女性は誰でもついてきて、無条件にモテると思ったら大間違いだ。
ま…たまーに、そんな勘違いをする医師も、いることはいるが……。
たとえば、こんな場合ーー。
女性同士で二人して、酒場の雰囲気を楽しんでいるところへ、彼女たちの会話に半
ば強引に割り込んでくる男がいた。
自分が内科医であることをアピールした後、この40歳になる男は、ニコニコと空に
なったビールグラスを、一人の彼女に差し出した。一瞬、女性たち二人の目がテンに
なり、二人共ムッとしたまま彼をシカトした。
彼は、彼女たちがなぜ不愉快そうなのかも分からず、しばらくグラスを差し出した
ままだった。彼は、当然その女性が、自分にビールをついでくれるものだ…と、錯覚
したのだ。
念のために言っておくと、相手は金を払って飲みにきているお客なのだ。
また、こんな場合もあるーー。
ある時、一人当番で深夜勤務の若い看護婦がいた。バイトの当直医が、彼女の仮眠
室に入り込んで、なかなか出て行こうとしない。そのうち彼は、この看護婦にベタベ
タさわったあげく、嫌がる彼女にHな行為を迫ってきた。
本気で怒り出したその看護婦に、そのバイト医師は、
「アレ、本気にしたの? バカだなあ…冗談だよ、冗談!」とかなんとか言って笑い
でごまかし、やっと立ち去った。
翌朝、看護婦は、事務長にこのことを訴えた。当然、バイト医師はクビになった。
いずれにせよ、女性は”NO!”と断らないものだ…と、彼らは誤算していた。
前者の40男は、酒場に女性がいるというだけで、なぜ単純に女性客でもホステスと
同じだと思ったのか?
それは、飲み会のときの医師たちは、ホステス代わりに看護婦たちを両隣にはべら
せ、ビールをつがせるのが当たり前だった。つい習慣で、外でもやってしまったのは
彼の誤算だ……。
後者のバイト医師は、イヤヨイヤヨは好きのうち…と思い、強引に迫れば、どんな
看護婦でもオチると思い込んでいた。バイト医師にしてみれば 独身の医師がいい寄
っているのに、まさか本気で嫌がる看護婦がいた!? と、いう誤算だ……。
しかし、医師同士…こと女性関係に関しては結束が堅く、たとえ周囲にバレバレで
も「○○先生の件ネ、あれはデマだよ」と、同僚をかばい合うことが実に多いのだ。