タイでの旅行中、ファランポーン駅から、タイムズスクエアまで、40バーツと交渉して、
独りでトゥクトゥク(三輪車のようなタクシーより安い乗り物)に乗ったとき、
いきなりポールペンで書いたメモのようなものを、トゥクトゥクのお兄ちゃんに見せられた。
ーーこの人はいい人です。
彼が某宝石店にお客さんを連れていくと、彼はその宝石店から、
トゥクトゥクのガソリン代を貰えます。
宝石を買わなくてもいいから、彼の案内する宝石店に行って
やって下さいーー
と、メモには下手くそな男文字で書いてあった。
まっいいかァ〜……と、
OKサインを出したものの、そのメモを見せられたのは、人通りのほとんどない路地裏だった。
なんかヤバイ……。
小心者のトリ頭の隅っこで、ジャンジャンジャンと警報機が鳴る。
『地球の歩き方』に載っていた”詐欺の手口”という記事がヒラヒラと頭の中で
舞っている。
私は、片言の通じるのか通じないのか判らないが、ともかく彼に英語でストップを
命じた。
実はタイムズスクエアで友達と会う約束があり、すでに約束に遅れてンだよ、と……。
17:30と書いた数字のメモを見せながら、ひたすら
プリーズを連発?して懇願した。
だから宝石店には行けないンだ、と……。
その時の時間は、すでに5時半を過ぎ、6時近かった。
もちろんソレは真っ赤な嘘。
とにかく私としては、人気のない場所から一刻も早く離れたかったのだ。
とたんに彼は豹変した。
ニコニコと笑っているが、目元はマジにキラリと光って全然笑いがない。
「100バーツ」
彼はいきりなり切り出してきた。
何ィ〜ッ? 乗るとき40バーツの約束だったじゃないか!?
急に冷静になる私。
あたしゃ、たった100バーツをケチって異郷の地で死ぬンかい!?
オイオイ、こんなトコで殺されるのはヤだよォォォ〜。
私は、彼が100バーツと言うのを粘って60バーツまで下げさせた。
交渉の最中も、頭の中が殺されるのはヤダヤダと叫んでいる。
私は、お金と命をハカリにかけて渋々OKしたのだ。
無事に目的地に着いたものの、なンか、だまされたようで釈然としない。
降りて金を払った途端、彼は、ウインク(^_-)ひとつすると、
「See
you agin!」の言葉を残し走り去った。
アンチキショ〜〜ッ!!
なンか言葉を投げつけてやりたいッ!
ううう〜ッ、タイ語が出てこないィィィィィッ!!(…って当たり前だっつぅのッ)
なンか、めちゃ悔しかった。言葉が喋れない自分がスゲー恥ずかしかったし、自分の
プライド(あるンかい、あるンよ)も酷く傷ついた。
タイに来て2週間余りの間、ひたすら(⌒‐⌒)笑顔と、片言のなんだか怪しげなスピーキング
英語と、その都度メモ書きした数字を見せることで、すべて用を足してきた。
私は、タイの国に来て、こと言葉に関してグータラだった。
ココに来て初めて、タイ語を喋れない自分を痛感したのだ。
根が生真面目な(ホントだってばァ)私は、ユーモアを交えて、口喧嘩…、できれば
タンカのひとつも切れるようなタイ語を覚えたいと思った。
くそったれぇぇぇ! タイ語を覚えてやるぅぅぅぅ!!
こうして私は、タイ語を習おうと決意したのでありました。じゃんじゃん!!
帰国後、まずやったことはタイ語学校探し。
私は、根が勉強嫌いって言うか、強制されて学ばされるのが大嫌いなわがまま者。
探す条件
トリ頭な私でも長続きできそうなトコ。
授業料の安いトコ。
ほいでもって、生徒にジャニーズ系の若い男の子がいたりして♪(ホホホ…(^o^;
あ...)
で、さっそくインターネット検索を開始。
何、授業料5万ナンボってか? 教科書代だけで、ン万円ですとぉぉぉぉぉ?
何カ所かしらべたが、みーんな高い。プーの私には払えましぇ〜ん(T_T)
ところが、しつこく探していたら、あったんンですよ、コレが!
それは、
泰日文化倶楽部というタイ語教室のHP。
1時間半で2千円の超ド初心者コース。
4月12日水曜より開始とある。しかも体験入学というか、見学も随時OK。
講師は、タイ人の先生と、タイ人と間違えられる日本人の先生!?
HPの掲示板には、そのタイ語教室を出たり入ったりしている生徒も居る様子。
出戻り生徒もOKなのかあ……。いかにもタイ的じゃないの〜……(^_^)v
ココなら力まず続けられそうだヨ。
よし、見学に行くぞッ!
初体験に挑む小心な私は、何もかもが初めてでコワイぃぃ〜(何が〜ッ!?)。
行くか行くまいか心の中で葛藤したものの、ビクビクする臆病な気持ちよりも、
好奇心のほうが勝ち、私はノコノコと高田馬場へ出かけていった。
そのタイ語教室は、怪しげな雑居ビルの2階にあった。
扉を開けた途端、いきなり一人の女性から浴びせられる、
ひゃらひゃらと音楽が
流れるような発音のタイ語の洪水!?
あたふたする私。
それでも、多少いじけた
いびつ笑いでサワディカーと、バカのひとつ覚えのように
挨拶をする。
落ち着いてよくよく見れば、そこには2列に合わせた長机を取り囲むように、5〜6
人の生徒がいた。
白い黒板を前に、色白の中年女性。隣りには華やかな顔立ちの若いタイ女性。
ゲッ? 生徒は、み〜んな私のようなオジサンとオバサンばっかり……
頭の中で予定してたジャニーズ系の男の子の生徒はァ???
( はかない少女漫画チックな夢でした、(^-^; ハイ… )。
唯一若い生徒は、私と同じようにHPを見て入った、T青年とRちゃんという女の子。
どーも黒板の前の2人が、タイ語の講師らしい。
ーーナンダ、優しそうな日本人じゃん。
私は、HPで、女性講師のY先生がタイ人と間違えられると紹介されてあったので、
この教室の講師は、ガングロで、首廻りも腕廻りもタクマシイ、タイの屋台を切り盛り
するオバチャンを想像していたのだ。
見学授業が始まると、Y先生は、タイ語の発音をするとき、口をイーッとかオーッとか
開けながら、ただでさえまぁるい目をもっとクリクリさせながら大声で指導している。
まさにタイ人的貫禄。
しかも、タイに滞在中のエピソードや、ひとつのタイ語に対して、その語源やら歴史をさらり
と雑談に交えながら授業を進めていくY先生。
うーむ、タダモンじゃないよネ。
あの〜Yセンセー! えーっと、私ィ〜入学しまーす!!
【つづく】