| 青山通信 |
わが友、青山鉄夫はすばらしい俳人です。彼の代表作などをいつかまとめて紹介しようとおもいます。
だが、このコーナーでは、俳句のことはとりあえず後に回し、彼が歌人たらんと志して短歌同人誌
「かばん」に所属した時期にMLに公開した(された?)奇矯なる言行録を採録してみました。
そもそも青山鉄夫という男ですが、奴はパソコンとはまったく無縁の生活をしていますゆえ、ネットに
関わるとなるとどうしても仲介者にたよった口述にならざるをえません。ところが、こんな遊び人の
戯言をまじめに筆記する余裕など毎日あくせく働いている我々にあろうはずもなく、もし正面きって
奴から頼まれたら私は断固断っていました。ところが、青山はケータイへの留守録を活用することを
思いついた。当時、私はPHSを携行しており、このケータイに一回3分で20件ほど留守録を入れる
ことができたのですが、奴は自分の言行とか就寝中にみた夢の話などを録音することを思いつきました。
かくて、数ヶ月にわたり私の留守録はほとんどすべて青山の占有物になり、ほとんど機能停止状態に陥
ってしまった。とうとう私が音を上げたのを機にこのハイパーストーカーゲームもオーヴァーしたのですが、
この間のやりとりがどんなものであったか、以下に掲載しましたものをご覧いただき、共に笑っていた
だけましたなら、口述者クボも青山も本望であります。青山通信よ、迷わず成仏せよ...
その1 青山鉄夫、ポカリ事件
「かばん」の紳士淑女のみなさまにご報告いたします。
歌会の翌日、青山は必ず「新宿将棋センター」へ将棋を指しにいきます。
そこで夜の10時まで将棋を指し続け、筑波行きの最終バスで筑波へ帰る、というのが上京してきたとき
の青山の行動パターンなのですが、先週の歌会後も同じパターンで行動した。
将棋センターではいつものように何人もの相手と戦うのですが(平日午後でも同センターにはたくさんの
客がいます。あんたらの生業は何?というような連中のたまり場になっとります。だから)昼間っから酒
の臭いをぷんぷんさせているような手合いも多い。
この日、青山はそういう手合いの一人、50代のアル中氏と対戦しました。
氏曰く「あんたはわしと同じぐらいの強さだ」
まだ将棋ははじまったばかりなので、青山も「そうです、そうです」と相づちを打つ。
やがて将棋が進み、次第に形勢に差がついて青山優勢になる、それでもアル中氏はなんだかんだと強がり
を言い、青山も「ええ、そうです、そうです」で押し通した由。
そうしてついに将棋は最終局面を迎え、アル中氏の王様が取られる寸前になった。ぐうの音も出ないアル
中氏を前に、最後の仕上げをしようと盤上にふかぶかと頭を突きだし考慮している青山の頭頂部あたりで
(青山曰く)ぽかり、と音がした。驚いて顔を上げると、赤ら顔をさらに赤くしたアル中氏のわなわなと
ふるえている顔が迫っている。氏、怒気をふくんだ声で「おまえは生意気だ!」と叫び、さらに怒りの拳
を青山の頭にふりかざす。周りの連中は知らん顔で自分たちの将棋を指していたため、青山も仕方なく席
主の仲裁を仰いだという。
まあ、こんなことは道場では日常茶飯事なのですが、電話でこの事件を小生に報告しながら「昨日帰りの
電車でAのT坊をいじめすぎた天罰かもしれない。いたぶれば、いたぶられる。世界の摂理が働いて、わ
しを懲らしめたのだ」と嘯いた。
そういう訳で、Aくん、青山は反省してましたよ。許してやってね。
その2 青山、説教さる(Hくん、真相は?)
Hさま、ならびに皆さま
昨晩新宿2丁目の将棋スナックで飲んでいるとTEL。一日を道場で将棋三昧で過ごした青山鉄夫から。
以下は彼の報告です。
日曜日、「未定」の句会に出た青山は当然自分の句が最高点を獲得すると例によって盲信していた由。と
ころが「未定」の主宰者のひとりであるS氏の奇妙な句が最高点を得た。
青山曰く、その訳は単純。清記のとき書き損じがあり、ほんとは「日」で作句したのにそれを清記者が「白」
と書き損じたため、互選のとき奇妙奇天烈な表現に驚いた連衆一同がこぞってその句を採った。だから当然
一番になるべき自分の句が2位になったのだと、例によって例の如くこじつけのひとくさりをしゃべった後、
翌朝Hくんと出掛けた喫茶店での出来事を話し始めました。
二人は向かい合ってさまざまなことを議論したが、Hくんがトイレにたって青山一人になったとき隣席の初
老の男が憮然たる表情で文句をつけてきた。Hくんも青山も大声で話すからそれを非難するコトバかと、青山
は思ったらしいがさにあらず。
その初老人曰く
「あんたねえ、もっと人の話を聞かなければ。話半ばで腰を折っては相手も話すことも話せんだろ。あんた
年上なんだから、相手の話を聞いてやらねばならない立場なのに、自分のことばかり話す。聞いてて不快だ」
まったく思いもよらぬ方向から反撃がきて、青山しばし呆然としたらしい。
電話のときは「まったくよけいなおせっかいだ、あのジジイ」と悪罵していましたが、世の中まったくいろ
んな神様がいらっしゃる。
Hくん、これは青山の電話だけど、ほんとはどうなの?
その3 青山通信、だってさ、Kさん
「かばん」の皆さま
青山鉄夫からの伝言を2,3お知らせします。まず、30日の歌会に出席不能になった件です。本人によれば、
「親父の3回忌を4月上旬にやる予定が、坊さんの都合で30日にずれ込んだ。これは自分が数々の親不孝を
重ねたせいである。残念無念!」と嘆いておりました。
それから、以下はKさんご指名です。
「4月号の歌会録拝見。約5分の1のスペースを、青山俳句に割いてくれたのは労とするも、ナワバシゴ、の
句他出来の悪い作品をいちいち取り上げ「会員名簿」作品と比較されては心外。最高の出来の作品と比べた上
でちゃんとした評価を下して欲しい。
卑怯也、K!でも、愛してるよ、Kちゃん。だから世話係をやめないでね」などとヌカしております。掲載す
るのもアホらしいが、シカトして書かないとあとでぶーたれるので、やむなく載せました。(;_;)
(;_;) Kさ
ん。
その4 青山通信、改悛・・
MLの皆さま
30日の歌会に父親の3回忌で出られなかった青山鉄夫の近況です。
ピアノをはじめて3年、青山が現在練習している曲はメンデルスゾーン・バイオリン協奏曲。週1のレッスン中、
若い女の先生に
「青山さんの弾き方は1小節ごとにテンポがばらばらになります」 と指摘され、
「あっていませんか?自分の耳ではテンポが狂ってるかどうか判定できません」と例によって例の如く理詰めの
反論を試みる青山に、先生問うて曰く
「青山さんは普段、どんな練習をしているのですか」
青山、胸を張って「CDを聴き、それを真似てます」と答えた。
するとピアノのそばから、「ピアノの初歩もろくにやっていないのに、いきなりそんな方法をとるなんて・・
私には信じられません」という深い嘆息と半分涙まじりの声がしました。びっくり仰天の青山、おろおろしながら
「で、では、どうすればよいのですか?」
すると、女の先生は、嗚咽しつつ以下のようなアドバイスを述べた。
「ほんとうに直すべきところは青山さんの理屈っぽさと、もっと素直に人の話を聞こうとする心ではないでしょうか」
青山、愕然となり「これからは人の話を素直に聞いて、りくつをいわないようにします」とこたえました。そして
普段とちがう小心な声で「これからはどのように練習すればよいのですか」と質問しますと
「お嫌でしょうけれど、とりあえずメトロノームを使って練習してくださいませんか?」
まるで懇願のような先生のこの答に対して、青山、素直に「ええ、こんどからとりあえずメトロノームを使って練
習します」と復唱した。
以上、本人自己申告による諸々の神さま話第2話でした。
その5 青山通信・女装の怪
MLの皆さま
先日、句誌「未定」の会のために上京してきた青山に「ML上でもおぬしの言動は大受けのようだぞ」と話を振っ
たところ、食べていた冷中の皿から顔を上げ、きょとんとしています。
そこでSさんやIさんの好意的なことばをかいつまんで話したら、青山、急ににこにこと、好々爺のような邪気の
ない顔になり、「そんなことでいいなら山ほどあるよ」と言って次の話をしはじめました。
(青山がド近眼であることを念頭に置かれたし。去年の手術のおかげで少し視力が戻り、女の人をねめ回す視線ま
で復活した)
例の「新宿将棋センター」でのことです。
対戦相手が決まったのでカウンターにいくと相手は女性でしかも四段。(もちろんアマ四段です。プロではありま
せん)二段,三段の女性はたまにいますが、四段で指せる女性は非常に珍しい。そこで、青山、相手に「女流棋士
ですか?」と訊ねると、「いいえ」と答えた相手の声が妙に野太く、ぎょっとして盤面から顔を上げると一瞬相手
と目と目があった。まさに目と目がぴたッと合い、その瞬間なぜだかお互いに顔をぽっと赤らめてしまったんだそ
うです。
「美人じゃなかったの?」と訊いても、青山「・・・」と言い淀んでおります。
さらに尋問すると「いや、濃い顔の男だ」と溜め息をつきながら答えました。その後、将棋の内容について延々
と「こっちが少し優勢だったけど、飛車&金、両取りの銀を打つと、向こうは 飛車を犠牲にしてそれで相手の玉
が固まって妙に攻めにくくて・・」と、ひどく煮え切らない言い訳のような話がずっと続きました。
いつもはすぐ結果(勝ち)を言うのになかなか言わないので、さては、と思い「将棋は勝ったんだろ、な」と意地
悪く訊くと、青山、さらに渋い顔になり、「負けたよ、おもしろくない」
ぶすっとした表情で、おもむろに皿に残っていた鳴門巻きをぱくりと食べました。
その6青山通信・天狗の鼻
MLのみなさま
今週、青山鉄夫からケイタイへ着信の雨あられがあり、つい根負けして受信すると「報告を一件」と宣う。
ある批評会で現代歌人の老大家O氏のことを「あいつは頭が悪い」と言い放ち、周囲の信奉者をフリーズさせた、
と自慢したあと「それはそうと、もっと凄いことが・・」なる前フリつきで以下の話をし始めました。
会の翌日いつものように「新宿将棋センター」に出掛けた青山は、席主の金田さんに「アマ強豪がいないので、奨
励会の堀尾三段と指しませんか」と勧められた。
奨励会三段はまだプロ棋士と認定されていませんが、将来の羽生善治たちがしのぎを削る凄いクラスのメンバーで
す。10代でプロ四段に上がるとほとんど将来を嘱望され将棋界のエリートコースに乗れます。
堀尾三段は19才。来年四段になれれば準エリート、といったレベルの棋士と思われます。その若きプロ三段に青
山鉄夫・アマ四段は素手で向かっていきました。
その日なぜか指先にまで気合いが入り青山四段は絶好調。正攻法(本人曰く)の筋違い角戦法を採用し(ほんとは
異端戦法です)序盤から若きエリートを圧倒。アマ相手に高をくくっていた若き三段が必死で逆転の手を探そうと
しても序盤のリードが縮まらない。
かくして危なげなくプロ三段の王さまを葬り、余裕の感想戦までやってのけ、その夜ご満悦のまま筑波へ凱旋した。
実見したわけではないので、話半分と見積もっても青山の勝利は相当の手柄と言えます(真剣師・小池重明のプロ
殺しとはスケールが違いますが)。
道場主に帰り際「青山さん、奨励会受けたらどうですか」と冗談を言われた由。
この天狗話を聞かせたくてさんざんケイタイしてきたらしい。
さいごに「クボくんの力ではとても俺には勝てないだろ、アハハ」とほざいた。脳力が減った青山如きにやられた
堀尾くん、懺悔して精進しなければ来年危ないぞ、とお節介なことを小生は思いました。
その7 青山通信・天罰
MLの皆さま
先週の歌会のあと、青山から立て続けに留守録4つ。順番に書けば以下の如し。
第1報
おーい、クボォ、最終バスに乗り遅れちまったよー。最後の相手が粘りに粘りやがってよォー、そいつを何とか料理
したら東京駅の筑波行き最終バスが出てしまってて・・これからどうすりゃいいんだよぉ、留守録でこんなこと言っ
ても仕方がないんだけど・・おーい、クボォー、どうにかしてくれぇ・・じゃあな。
第2報
おおい、あれ、あれ。とにかく東京駅ですごしていま我が家について眠りにつくところであるぞ。将棋を指している
ときクボからもらった食糧が役に立った、ありがとよ。さいごにやった奴は、強いけどアマチュアでやっぱり弱くて、
粘って粘って勝ったとき時計を見たらもう12時近くで・・うう、ひどい、ひどい、東京駅の階段で夜を明かしたん
や、クボォ。クボのアホたれ、とはとても言えないから、ああ、オレの、オレのみじめったれー・・そういうことや、
じゃあな。
第3報
こうなったのもわしの行いが悪かったからや。ああまでして勝つことにこだわることはなかった・・
棋譜でいうとオレの方は65馬、45銀といて相手は桂をもっていたから喜んで53桂と両取りに打った。相手は
55馬が王手になることに気付いていないようなので、わしは音を立てないようにそっと馬を55に移動した。相手
は喜んで45桂と銀をとった。そこで、わしは静かに馬で相手の王様をとりその王様をそっと駒台に置いた。予想通
り、相手は自分の王様がとられたことに気付かず、首を傾げながらうますぎる、という顔で57桂成ると攻め込んで
きた。そこでわしは静かに駒台の「王将」を指さした。
すると相手は「あっ」と叫んだまま飛び上がって・・・
わしは笑いをおさえることが出来ず・・いままで王様を駒台に置いたことはあんまり記憶にない。
それが、それがいけなかったんや。やっぱりそうまでして勝ってはいかんのや、クボー、クボもよく心しておけよ。
そういうことや、じゃあな。
第4報
ああ、また思い出したけど、その前に別の奴を相手に指した将棋で敵は角が成れないところに成ったので「かばん」
の歌会のとき「ことり、まだまだ、ことり、虫の息」と読んだ陰鬱な調子で「その角は成れませんよ」と言ってその
ままその将棋は終わったことにしてカードを持って静かに席を立った。相手は憮然とした顔をしていたが、わしは反
則勝ちということで勝ってしまった。相手はそんなに性格が悪そうな奴ではなかったんで、悪いことをした、と思うが、
わしがこういうことをするのは相手が暴力的な奴と感じない場合に限るんで、この相手は性格が良さそうな奴だったん
で、こういうことをした。
この二人、性格が良さそうな奴と前に王様をただ取りした奴、ごめんなさーい。
註(将棋は王様をとられたら即負け。だから王手には絶対対応しなければなりません。「坂田三吉、王手にゃ逃げる」
と演歌の歌詞にあるとおり。アマチュアの将棋はふつう王手の待った、とか角成りのルール違反には待ったを認める
のが礼儀。青山の指手は将棋道場の手としてはシビアすぎる)
その8 青山通信・眠れぬ夜に
MLのみなさま
ケータイの留守録は緊急の場合もあるのでほんとはすぐ聞いて確かめなければならないのでしょうが、本来重要な
用件ならちゃんと別口の連絡があるはずと思い、忙しさにかまけて2,3日放置したあと開いてみると、案内の開口
一番「あ・た・ら・し・い留守録が10件あ・り・ま・す」
どうせ、悪戯小僧の青山からに違いない、とは思ったが、万が一中に大切な用件が含まれていたらまずいので仕方
なく全部聞きました。
ファスト・フード店で中年男がケータイを耳に、ときたま、にーっと笑いながら30分も黙って聞いているのはさすが
に異様に映ったらしく、高校生どもがちらちらこちらを見ていました。少しく居心地の悪い思いを味わわされたが、
結局全部、青山鉄夫からのものだった。ちくしょうめ。
その内容ですが、用件はゼロ。夜中に目が覚めて、眠れぬままにだらだらと日頃の笑い話を(半分は自慢話。しかし、
まあ、落語的な語り口も少々感じられたので許す)5つばかり次々に吹き込んで、10件になった様子。
奴はこれら全部を青山通信に載せることが出来る、と思っているらしい。幸か不幸か、わたしのケータイの充電器が
壊れたため再度確認できたのは次の3件だけでした。(テープを跨いだ案件が2こ)
以下にかいつまんで転送します。
「視力検査をしたとき、例のわっかの上下、右左のどこが開いているのかと聞かれて、目で見てすぐには判断できな
くて、ええと、どう見ても上は開いてなくて、右もあいてなくて、下もあいてなくて、左はわからなかったけど、検
査の人に『上下右はあいてないから、左はわからないけど論理的に考えて左しかないから、左』と答えると、検査の
人は『あんたァ、理屈っぽいねえ』と感に堪えぬ声を洩らしたのであった。誰からも言われるんだけど、またしても
こう言われてしまった」
「音楽の小野先生に、メトロノームに合わせてピアノを弾け、といわれているが、音というものには出て終わるまで
に時間の幅があるので、その幅のどこに合わせてピアノを叩けばいいのかわからない、て訊ねると、小野ちゃんは、
メトロノームとピアノがぴったり合っているときメトロノームの音は聞こえない、て答えたけど、オレの場合は聞こ
えるんで、こう質問をしたんだけど、最初の頃は反論できず半べそをかいてた小野ちゃんも最近は図々しくなって
『青山さんはそんな音のわずかな時間差をどうこういうレベルの腕ではないでしょう。そういうことは名ピアニスト
といわれるような人が悩めばよい問題です。青山さんはちゃんとメトロノームについて弾いていればそれでよいので
す』と反論されてしまった。最初の頃はオレから攻められる一方だったのに、最近は‘攻めるは守るなり’を覚えて
反撃してくる。思えばクボも昔は人格者ぶって、オレからからかわれるままになっていたが、そのうち反撃するよう
になり、最近はどうもうまくオモチャにはできなくなった。 人間をオモチャにするのはなかなかむずかしいもんで
あるぞよ」
以上、青山語録でした。
その9 青山通信・ナルシスの嘆き
MLの皆さま
「オレは自分ではふつうよりいい顔だとおもうけど、青木さんもそう思うでしょう」 と、問いかけられた青木さん
は青山鉄夫が通う絵画教室の友達で、うそがつけない正直な人。(今秋、筑波で二人展をひらく予定)
青木さんは、この青山のごきげんな質問に対して、クククっと笑ったので、青山「そう思わないですか、変だなあ」
と(大声で)つぶやいたが、それでも青木さんは「うん」と頷いてくれません。
「ではせめてふつうぐらいはあるでしょう」
その瞬間、ふだんは温厚な青木さんがこらえきれなくなって大爆笑した。しかたなく矛先を絵の先生に向けると、
先生、先手を打って「ぼくもノーコメントです」
また未定の句会のとき、ベテラン俳人のYHさんにしみじみとした声で、「青山さんも昔は可愛かったのにねえ」
と言われた、と憮然。
どうして皆んな、オレのいい顔がわからないのだろう!以上が常日頃のこの男のボヤキ節なのですが、この前ケータ
イに、この件に関するあらたな斬新なる自省録が吹き込まれておりました。以下にかいつまんでご報告しましょう。
このまえバスに乗っていたら、窓に人間が映っていた。前の席は女の人で映っているのは男で、誰かな、変なの、と
思ったが、はっと気付いたらそれはオレで、オレもオレの顔を見たとき変な顔、と思ったのは事実で、愕然とした。
以前、喫茶店のトイレの内側が鏡張りになっていて、一瞬びっくりしたけど、そのあと自分の美しさに陶然としたも
のだが、今はオレの顔もここまで落ちたかと思って、愕然とした。
「かばん」の女の子たちが、三歩下がってオレの影を踏まない理由もよくわかったよ。
クボ、クボも又、オレが、オレの顔はいい顔だろう、と何度迫っても「うん」と言わない理由がよくわかった。おい、
オレは生まれたときはあんなに可愛かったのに、どうして、どうしてこうなるんだよ!おい、クボォ、アァア、悲し
いよぉぉ・・
わが顔を蹴飛ばし時は吾を過ぐ 鉄夫
その10 青山通信・こわい話
MLの皆さま
午前3時、夢の記述
母ちゃんが「お前、成績どうだったの?」というので、「ほとんど5で、東大絶対合格の成績だ」と答えると、
母ちゃんは「お前が入れたのはマグレ。先生も言ってたよ、お前はほんとうはロボットで、勉強もやってないフリして
やっている才能のない人間だ」と言ったので、オレは怒って母ちゃんに蹴りを何発も入れた。
そのとき母ちゃんは30センチぐらいの大きさになっていて、その母ちゃんにオレは何発も蹴りを入れた。母ちゃんは
相当のダメージを受けたようで、オレの妹のヨシ子が母ちゃんに人工呼吸をしていたが、母ちゃんは等身大にもどって
血塗れで倒れており、命があやういようだった。
夜中に扇風機をかけて眠るとどんなに遠くに置いて微風にしても、こういう血も凍りつくようなこわい夢をみる。
この前の夢は、泥棒が窓から侵入しようとしているのに体が動かなくて、恐怖に凍りついたんだけど、去年までこう
いうことはなかった。
どうもおかしい。今年、50才になるからかなぁ・・
いままではいつも、「鉄夫や、お前はいい子だね、才能がある子だね」と言っていた母ちゃんがあんな冷酷なことを
言ったのは大変なショックで、いつも自信満々だったオレも自信がゆらいでしまった。
実際、いままで何もなしえていないし、25年前にクボと
急がねば墓石になるぞ春嵐 鉄夫
と言って笑い合っていたが、25年経って何ごともなしえていず、ほんとうに墓石になってしまいそうじゃないか、
クボ!
いまはもうほとんど墓石木枯しよ 鉄夫
その11 青山通信など
MLの皆さま
大忙しの予備校・夏の陣を切り抜け、24日からまたぞろタイへ行ってきます。私の同僚(&相棒)がタイの
チェンマイに店を出し、その店がつぶれる前に見物にいく、というのが名目のひとつ。
わが相棒氏は現地のタイ人たちを叱咤激励して2ヶ月働かせたが、ぐーたら度なら世界一、という定評のあるタイ人
どもは、日本人オーナーのケータイ指令ぐらいじゃぜんぜん仕事をしない。軍資金4百万がたちまち溶けてなくなり、
その後もオーナーのお財布は底抜け状態。さすがにヤバイと思ったか、超多忙な仕事の合間を縫ってチェンマイへ飛ん
だわが相棒氏、2泊4日の強行軍ながら店を牛耳っていたオカマの兄弟をくびにするなど大いに戦ったが、帰国後弱気
になったようで、ぽつりと「あいつらをまともに働かせるのはムリ。で、居抜きで安く店が買えるんだけど、クボちゃ
んも出資しないか、オカマの店なら儲かるぜ」ミイラ取りがミイラになったようなおそろしいことをいう。でも、別の
同僚がこの話を聞いて「お、いいね」と乗り気なのがもっとおそろしい。
まあ、どんな店か見てきます。「Rajendar dining Bar」という名前の店です。タイのチェンマイ
へ行かれる方があれば、お寄り下さい。ナイト・バザールの近く。まだ、いまもまともなイタメシ屋でしょう。オカマ
バーではございません。
以下は、恒例の青山通信。
今、実家に来てるんだけど、妹と姪と甥の前で「オレ、‘かばん’の女の子たちにかわいい、ていわれる」て言ったら
妹の敏子が「それは、チャーちゃん(青山の愛称)が何でも知っているし面白いからそう言われるのよ。別に顔がかわ
いいからじゃなくて、そういうところをかわいいっていわれるのよ」てみんなに解説すると、すかさず姪に「それは
ウソやで。だってチャーちゃん、モームス知らんかったやないか」て反論されてしまった。(妹の嫁ぎ先は和歌山。
甥と姪はこてこて関西の由)
それから、甥の方はオレとにらめっこすると必ず笑い出すので「どうして笑うんだ」て聞いたら、「だってチャーちゃん、
へんやもん、チャーちゃんの顔、へんやもん」
こんなこというんだぜ、クボォ、じゃあな
その12 青山通信・「夢百夜」その1
MLのみなさま
おひさしぶりでございます。真夜中の青山通信です。ご拝聴くださいませ。
これまでこわい夢は見なかったのに、今年に限ってこわい夢をときどきみる。これは今年50才になることが関係
している、と思う。
高3のとき、トーマス・マンの「幻滅」という小説の感想文を書いた。夕暮れ、灯りのないうす暗い部屋から50
才の男がサンマルコ広場を見下ろしながら来し方の幻滅についてもの語る小説だが、そのとき17才の俺は50才
になった俺を想定して、「50才の老人になったとき」と表現したことを覚えている。ふだんの生活では、50才
が老人だとは思っていないが、無意識は50才を老人と思っているらしく、それがこわい夢に関係してくる。夜中
に回していた扇風機の微風で背中が寒くなり、それが夢の中では背筋を凍らせるこわいイメージへ変換されてしまう。
夢の中の登場人物の内、みんなが知っているのはIさんで、これは名前のせいで出てきたと分析できる。谷に入る、
入り込む、という思いは俺の中では、「鐘はげし絵になる山に分け入らん」という俺の句のイメージと関係があり、
もう抜けられないところへ入り込んでしまったという思いと関連がある。
ほかの登場人物は相変わらず俺の小学生時代の仲間で、俺も小学生のままなのだが、今見た夢の中の場所は大学構内
で、それは俺が2度中退してそのまま卒業しなかった東大だった。普段目覚めているときの俺は、いまさら中退など
関係ないと思っているし、むしろ意識の上では誇りに思っていたのに、無意識は非常に後悔しているらしく、何度も
形を変えて後悔していることを思い知らせる夢としてあらわれてくる。
夢の出だしで、俺は2浪であり(どうせ落ちたら3浪だ)と思って受験せずに3浪目に突入するのであるが、その後
(2浪のとき受けておけばそれで済んだのに)と深く後悔しているシーンから始まった。キャンパスにいて、俺は演
劇部に入っている。でも、それを忘れて、ちょうど通りかかった友達(これは大学生)に小学生の俺は「何曜日にな
ったんだ」と質問している。絵の具の赤色の洋服を着た友達は「火曜日」と答えた。これは赤が火を連想させて、そ
う答えたと分析できる。このとき「しまった、行かなくちゃ」とまたまた深い後悔の念に襲われた。
ふたりの傍を女の子が通り過ぎた。この子は島田のり子という子で小学校のとき好きだった子のうちで第4位(とい
うことは最下位)の女の子だが、このときとつぜん大学生の友達に対して訳の分からぬ怒りをおぼえた。俺は友達を
フォーク、それも人間の大きさのフォークで刺し殺してしまった。血は出ず、肉の塊が二つあるという印象が残った。
血とか骨とか生々しい印象はなかった。それを見ていた女の子たちが「イヤーねえ」という顔をしたような、しない
ような曖昧な感じがしたが、女の子たちは通り過ぎて行った。
そうして俺は死刑、ということになり、深い後悔の念にかられたのである・・・(その2へ続く)
その13 青山通信・夢百夜その2
その1から続く。
俺以外に2人、死刑ということで壁に立てかけたベッドのマットのようなものの上に座らされた。そこへ6人の老人
が死刑を宣告しにやってきた。前に3人、後ろに3人並ぶ。マットの上の死刑囚は、真ん中に俺、右横は小学校のとき
いちばん勉強が出来なかった鈴木理三郎で、俺に顔を寄せてこう囁いた。「みんなも同じことを言っているのに死刑に
なるのは俺たちみたいな奴だけさ」
そのとき風景全体は頭だけでたまち針を刺したような図柄で、それは今度の展覧会のために描いた絵のイメージに関連
している。6人の老人の横に黄緑色の池のようにものができていた。
宣告者のうち右端がいちばん偉い老人で、それは1年半ほど前に死んだ高屋窓秋という俳人だった。「頭のなかで白い
夏野となつてゐる」という有名な俳句の作者だが、死ぬ前は俺が入っている「未定」の同人で、つい最近追悼号を出し
たのだが、その老俳人がわれわれ3人の死刑囚に向かって「今回はありがとうございました」と言って頭を下げ、ほか
の5人の老人も同時に頭を下げた。窓秋は黄銅色の法衣のような上下つながった服を着ていた。ほかの老人も同じよう
な地味な服を着ていた。俺は(死刑囚に向かってどうして、ありがとう、なんて言うのだろう)と不思議な気がしたこ
とを覚えている。
窓秋は、3個の角砂糖そっくりのものをセロファンに包んで俺たちに渡し、その説明をした。鈴木理三郎に訊くと「飲
めば苦しみもなく即死する薬らしい」という。俺は生まれてこの方意識の上では、死のう、と思ったことは一度もない
が、こんな薬があったらいい、と想像していたのが夢に出たのだ、と思う。
左の奴も飲み、右の鈴木くんも飲み、気付くと壁にもたれて死んでいる。俺だけ飲まずに壁にもたれて窓秋のコトバを
聞いていた。そばを通り過ぎる女の子たちは何事もなかったように通り過ぎたが、より冷たくなったように感じられて、
何か非常にさびしい思いをしたのだが、そのとき深い後悔の念にとらわれて、こわい、なんとこわいんだろう、と思っ
ていたあたりで目が覚めた。そして、夢であったことに気付いて、あまりにもホッとしたのでクボに長々と電話したの
であった。まあ、クボには申し訳なかったが、このまましゃべっているとどんどん出てきて朝になってしまうのでこの
辺で打ち切ることにする。
御清聴ありがとうございました...こわいよぉ、クボォー、俺たち50だぜ、老人だぜ、もう先はないんだ、俺たち
に明日はない...じゃ、そういうことでな、あばよ。
その14 青山通信・夢シリーズの続
MLのみなさま
夢シリーズの続き(と深夜の留守録は暗い声で続きます)。
俺の夢の中の登場人物はいつも小学生時代のままで、例えば俺のおふくろも30代の姿で現れる。いま見た夢を思いつ
くまま挙げていくと次のようになる。
当時好きだった4人の女の子のうち、いちばん好きだったもんじみえこがレイプされて子宮外妊娠して病院へ行く。
そのときもんじみえこが淋しげな笑みを浮かべ、夢の舞台から消えていくのがまず深い印象となって残った。
2番目に好きだった子はきれいな子だったが、からだは大人っぽくて、おふくろは「短い期間つきあうのはいいが、
結婚するような相手ではない」と言った。
3番目のえのもとようこ、4番目の嶋田のり子は登場しなかった。
この夢を分析してみると、川端茅舎の俳句に「蚯蚓鳴く六波羅蜜寺しんのやみ」という有名な作品があり、これと関
係があるように思う。六波羅の6は英語のsixでこれは中1の頃みんなでふざけてsex、sexと言い合ったよ
うにセクハラに通じており、もんじみえこがセクハラされたという意味であろう。蚯蚓、という言葉も男たちが面白
がって言う「みみず千匹」とかそういうことにつながっているんじゃないかと思う。そういうことは女の人にとって
はイヤなことじゃないか?
これらのシーンは基本的にはすべて相当な闇の中で進行していくのだが、闇ばかりが深い、というのはこの前みた夢
と同じく俺がやがて50才を迎えようとしていることと関係がある。50才というのは相当な分岐点となる年齢であ
ると思う。
ところで今まで生きてきて俺よりすぐれていると思った唯一の奴、そいつは田中宗治という奴だが、小学生のとき美
術はいちばん、音楽はビリ勉強はバツグンに出来るという奴だったが、高校のときノイローゼになってそれ以後消息
を知らない。その田中宗治が夢に出てきて夜の闇の中で一緒にバレーボールをしている。
場面は変わり、部屋の中。親と兄弟たちと一緒にいる。死んだ親父も姿を見せている。日本の作家でいちばん好きな
安倍公房の本がくしゃくしゃになっていたので俺は妹たちにひどく怒って、丁寧に本の皺をのばそうとした。これは
個展の売り物に出す鞄にしわが寄ったので、その上に重しをのせて修正した作業(8kgの鉄アレイを2このせてピ
ンと平らになるようにした)と関係している。
とにかく昔は俺だけが何でも出来たのに、今は妹も弟たちもかなり難しい本を読んでいて、我が心胆は寒くなるので
あった。俺の中で何もかもが売れてしまったと思い、暗い気持ちになり、やがて真の闇になっていくのであった。そ
れは全くの闇でありどこをどう歩んだらよいかわからなくてとまどっている。
おふくろの実家では雨戸をすべて閉めて寝るのだが、俺はイヤなので開けておく。すると夜中におふくろが忍び込ん
でまっくらにするため俺はブーブー怒るのだが、かすかな光をみつけてやっと脱出した。脱出した先が現世なのか霊
界なのかその区別がつかない。俺はただ慄然として佇むのみであった。そこまでの記憶しかない。
あーあ、あまりにも暗い、もっと光を!ゲーテ
その15 青山通信・折衷型の話
MLのみなさま
ご拝読ありがとうございます。青山の話は全部ケイタイの留守録に吹き込まれたものです。朝仕事前にケータイを
みて留守録のメッセージ表示のマークがあると「また出たか、おんぶオバケめが!」と悪態をつきたくなることもあ
ります。あるときなどは西荻駅で聞き始め、総武線大久保駅で話なかば、路上で聞くことさらに20分。最後の留守
録の終わりに「ご静聴ありがとうございます」と落とされてあやうくこけそうになった。ほんとにアホの極致かな。
でも、青山本人はこのMLを一度も読んだことがないのです。ただ単純に、自分の話が受けてるのが嬉しくて仕様が
ないみたい。こんな状態がいつまでも続くと我がケータイは青山鉄夫さまご専用留守録になってしまいそうですな。
さて、へんな顔シリーズの続き。
前半部分は、消したメッセージの中の話だったので内容が不正確かもしれません。AIさん、間違ってたらゴメンね。
あるときIさんに「Iさんの顔は可愛いと美しいの折衷型ですね」と言ったらIさんは不満そうな表情をしたので、
誉めているのにへんだなあ、と思っていると、今度はIさんの方から「では、青山さんも折衷型ね」と反撃され俺は
不愉快に感じた。(以上、前半。以下は留守録、青山が話した通りです)
それでこの前の歌会の後「ルノアール」で話したとき、同じテーブルにTの旦那(作家のETさんのことを失敬にも青山
はこう呼ぶのです)と、MaさんとMoさんと後はKちゃんが居たと思うけど、この顔の話になり、旦那が「折衷型という
表現が悪い。折衷型というのはあんまりプラスのイメージがない」と言い出し、MaさんもMoさんも「そうだ、そうだ」
と言うんだよな。
クボも知っての通り、俺のコトバはだいたい神のコトバとほぼ等しいわけで、おかしいなァ、と思ったけど他の連中は
まァそう言うわけだ。旦那が、これは人生最初で最後の冴えた表現だと思うんだけど、「そういう場合は両立型と呼ぶ
べきだ」と言い直すと、女の子たちがまた「そうだ、そうだ」と同意するんだ。結局、折衷型とよんだからうまくいか
なかったので、両立型といえば通じたはずだ、という結論になった。
その後、Aちゃんが、折衷型=顔が悪い、という意味ととり、俺に向かって「じゃあ、青山さんも折衷型ですね」と反撃
したケースはどうなのか、という議論になったとき、「その場合は折衷型で正しい」と旦那が言い、みんなも「そうだ、
そうだ」と口をそろえた。
これってひどいと思わないか、クボ!まあ、顔シリーズの一環としてしぶしぶこの話を伝えたわけであるが、今わしは
ひじょうに憮然としている次第である。
やっぱり俺は悲しい存在なんだなァ。自分を犠牲にして万物を、人間も人間以外のものもこぞって楽しませる存在として
生まれてきた、俺は悲しきピエロなんだなァ。
クボぉー、おおい、クボぉー
註 作家のETさんのコメント
(前略)それは青山さんがひどい顔ってんじゃなくてね、「人に折衷型なんて平気で言うのに、自分が言われるとヤな
感じがするという実感をもったのなら、それは青山さんが一度はそういう体験をすべきである、だからそう言われて
しかるべきだった」ということなのでーす。要するに「わが身をつねって人の痛みを知れ」ってことね。そのとき青
山さんがひどい顔であるかどうかは問題ではないのでした。(中略)なんのかの言って青山さんは愛されてますよ。あ、
本人には言わずもがな?私も実は青山通信ファン
その16 青山通信・折衷型の話の補足
Tさま
どうも、明快なご解説、ありがとうございました。本日のアホ山通信です。
「クボのあの表現では、俺が折衷型といわれてホントに怒っているように見える、てことになるようだぜ。あれは
笑ってもらおうと思って言った部分なのに、クボの表現力不足のせいで反対の意味になったんじゃないのか?まあ、
書いてもらっている身分でこういうのはちいと申し訳ないが、その点にひとつ疑問を呈しておく。でも、クボが口を
とがらせながら、こっちの苦労も知らないで、と言っているのが目に浮かぶようだ・・」
しゃべりった通り載せたのですが、ニュアンスまで写らなかったようで、この折衷型の話は失敗ですね。それにして
も、カルマ、カルマ、カルマ!西行法師の歌を唱えて、破邪!
身につもることばの罪もあらはれて心すみぬるみかさねの瀧 西行
それから、これまで一度も青山通信を見たことがない青山鉄夫のために最近の5,6回分を本日郵送しました。読
んだアホ山が何言ってくるか、思うだに煩わしい。さはさりながら、つもりしカルマの所以かな。
その17青山画伯・二人展素描
MLのみなさま
先々週の筑波吟行に続けて、先週末も「つくば」へ出掛けました。(吟行世話役のMoさん、遅ればせながらどうも
ありがとう。お友だちのNmさん、後輩のNnさんによろしく言っといてくださいね)
今回、青山鉄夫画伯渾身の作品群38点を見物にでかけたのは俳句誌「未定」の同人のYTさんと「未定」元同人の
Sくん、それと私の3人。金曜午後ハイウェイバスでつくばセンターに到着したとき、ざんざ降りのまっ最中。先行
き大波乱の予感あり。
青山の留守電によれば連日数十名の来訪者があり、中には「この絵の作者はどなたですか?これは素晴らしいが、
はたして絵なのか?」と質問して、応対した青山を絶句させた強者や、「私は軍事評論家ですが、この作品は戦闘
中の兵士の頭の中を想像させますね」と述べて、青山を驚喜乱舞させた変なお客もいたらしい。私も大いに楽しみな
気持ちで会場へ向かいました。
会場は中央に大きな池がある洞峰公園の記念館。館内から見える池の風景はなかなか絶佳で散歩がてらに展示物をみ
る人たちで賑わっている様子。我々3人が到着したとき雨がひどくてお客さんはほとんどいなかったが、私が青山と
四方山話をしている間、俳人二人は作品をじっくり鑑賞していた。会場の隣のティルームのテーブルに4人着席する
と、青山、得意そうに「どうだい、Sくん、正直な感想は?」とSくんに話を促した。
すると、Sくん、一呼吸置いて、「今日は思ったとおり言います。青山さんの絵は初心者以下です」
この直截な酷評後、堰切ったように青山の他の表現活動についても否定的な言葉を連発。ふだんなら、ああ言えば
こう言う青山が何も言い返さず打たれるままになっている。Sくんは芸大受験の経験もあり、絵画には一家言以上ある
男。私がみた印象では、38点中少なくとも5点は、どの展覧会に出しても遜色なさそうな作品じゃないか、と思えた
が、(15点ぐらい、Sくんの酷評どおりの絵もあった)その良さには一切触れず全否定。
同行のTさんは、自身かって美術の先生でさらにお父さんが彫刻家という美術畑の方ですが、彼女もSくんほどではない
が、甘い評言を言わない。
いつもなら受けた打撃の数倍きつい皮肉寸言で切り返す青山が静かに聞いていたのだから、ショックの大きさも知れ
ようというもの。その後、酷評はソフトランディングしていきましたが、青山の「もう明日は絵のことについては話
すの、なし。俳句のことに限定しよう」という結語にも意気消沈の思いが如実にあらわれていた。
その夜はつくばのカラオケ店で6時間熱唱、みんなで青山の傷心をなぐさめ(Tさんは早くに帰京す)、Sくんとサウ
ナに泊まった翌日ふたたび会場へ赴くと、昨日のしおらしい言葉はどこへやら。 青山、開口一番、
「今朝、早くここに来て、クズを全部破棄しようとしたら、Aさん(二人展の相方)が、まあまあ、というので辛うじ
て踏みとどまった」ともーれつな恨み節をSくんへビーンボール。そして、さらに「どうせ、クズなんだから。クズな
んか人に見せてもしようがない」などとくどくどくどくど拗ねたことを口にする。
何だ、昨日は殊勝なことを言っていたのに。了見の狭い奴!と思っていると、反撃されたSくんは怒ってぷいと外へと
び出した。青山とふたりになったとき「もう絵のことは話題にしない、て昨日おぬし自身が言ってたじゃないか」と
難詰すると、「え、そんなこと言ったけ?全然おぼえてない」 とほんとにすっかり忘れていたらしい口ぶり!!
土曜日は前日と違って快晴で訪問客が百人ちかくもあり、それで少しく傷心が癒えたかも知れませんが、こんど「かば
ん」の朗読会のとき作品を何点か持参してくればほんとに回復したと判定できましょう。
その翌日宇都宮のサウナで読売新聞を見ていたら、「かばん」の歌人・東 直子さんのお姿を発見しました。偶然だ
けど、ご報告をば一と言。
その18 青山通信・青山からの通信
MLのみなさま
青山本人からFAXで届いたものです。(一読、私に対する個人的難詰かと思いました。本人 バージョンだそう
です...)
久保が、今までMLを読んだことのない俺に、突然10数枚プリントを送ってきた。「メーリングリストに入って
いない青山さんにここで書くことに意味があるか」という、Tの旦那の言葉が理由らしい。俺としても、「折衷型」を
めぐって話がこじれている理由がよくわからなかったので丁度よかった。以後の部分は、送られてきたプリントの内、
変だなあるいは事実と違うと思った点についての注である。
1 「オレ、「かばん」の女の子たちにかわいい、ていわれる」(久保) ああ、それが事実だったら!
2 「青山さん、純真無垢な魂の持ち主かと思っていたら案外そうでもないような気がしたりして。でも、雨戸を閉め
られるのが嫌ってところ、とっても青山さんらしいですね」 (Maさん) 前半、今までそう思っていたなんて信じら
れん。俺がそんなわけないだろ。後半、なぜそれが俺らしいんじゃ。気に入らん。
3 「ただ自分の話が受けてるのが嬉しくて仕様がないみたい」(久保) 久保のそういう鈍さが実人生では救いにな
っている。「青山通信」に反応を示した人の中にも反感露わだったものもあるし、反応無しの人の中には何て野郎だ
と思っている人が沢山いると確信している。
4 「「では、青山さんも折衷型ね」と反撃され俺は不愉快に感じた」(久保) 言葉に対する感覚が鈍い。俺は
そう言われたことを愉快がって話したのだし、久保もそれを知っているのに、これでは逆にとられてしまう。久保に
散々迷惑をかけながら、こういうことを平然と書く俺も非情ではあるが・・・。なお言えば、人の身体的特徴
を話題にした俺が一番悪い。できるだけ自分を笑い者にするように努力しているのだが、それでも外部世界に全く触れ
ないようにするのは難しい。だから、旦那達に、俺は折衷型だと言われた時も俺自身は楽しんでいたのだが、どうも
通じなかったらしい。ほんとうに気にしていることは久保にさえ言ったことがない。以上で旦那の注記に対する解答
もしたことになると思う。
5 「奴はこれら全部を青山通信に載せることが出来る、と思っているらしい」(久保) 阿呆か!
以上でやんす。阿呆か!、と書かれて頭にきたが、「身につもる言葉の罪」は同じだもんね。識者のご判定におま
かせします。それにしても、アホ山の毒舌野郎メ!
その19 青山通信・この親にしてこの子あり
MLの皆さま
こんばんわ。永らくお蔵入りしていたアホ山通信でーす。
クボはよく知っていることだが、今回はわしを産んだカアちゃんの運動神経の鈍さについてひとつ通信してみたい。
エスカレーターにのるとき誰でも一瞬躊躇するが、わしのカアちゃんはとくに踏み出す足のタイミングがつかめなく
て右を出してはひっこめ、左を出してはひっこめしてなかなか足を踏み出せない。われわれ兄弟はおもしろいので手
助けしないでじっと見ている。もちろん倒れたら危険なので助けられる態勢をとって見ているのだが、カアちゃんは
俺とちがって弱音を吐かない偉いところがあるため頑なに自力で乗ろうとして、見ている俺たちを大いに楽しませる。
さて、うまく乗って死をまぬがれたとしても今度はすぐにうまく降りられるかどうかの心配でカアちゃんの頭はいっ
ぱいになる。かくして同じことが繰り返され、それはわれわれ兄弟の大いに楽しみとしているところである。
むかし、俺は木造のオンボロ公務員宿舎にすんでいたが、そこは隣と木の板の仕切りが薄すぎて話し声はおろか単語
まで聞こえる環境であったため普段は煩わしく感じていたのだが、これがカアちゃんの死を救ったことがあった。
あるときカアちゃんがお昼にサツマイモを煮ながらつい一口試食すると、それがのどに詰まって窒息死しそうになっ
た。ウウーッと声を出したが俺は小1ぐらいの年齢でどうしていいかわからず、ただ呆然としてカアちゃんの苦悶を
見ていた。そのときは夏休みか何かで、隣の家に6年生の沼田さんちのとしよちゃんが居て声を聞いてすばやく飛び
込んできてカアちゃんの背中を叩き、そのお陰で芋は無事カアちゃんののどを通過し、かくしてカアちゃんは犬死に
ならぬイモ死にを免れたわけであるが、そういうカアちゃんのとびぬけた運動神経の鈍さから考えてみると、カアち
ゃんの宇宙観によれば、この世は到るところ死の危険に満ち満ちた世界なのでないか、と思われる。だから、そのバ
ランスを均るためにポコポコ5人も産んだんじゃないか、と斯様に俺は推測するわけである。
ところで俺のことを5人兄弟の何番目か、といろんな人に訊いてみるとほとんどの人間が「いちばん下」と答えるが、
それは非常に人間を見る目がないわけで、99%はそう答えるのだが、芸術に携わる残りの1%は、長男、と見抜く。
長男と見抜いた残りの1%だけが芸術に携わる者であるからして、俺を長男、と見抜けなかった人間はただちに短歌を
やめるべきである、とそのようにわたくしは思う訳であります。以上
このアホ山通信はこれでお終いですが、ユニークなカアちゃんのことは私もよく知っています。それで次の秘話を披露
すると「また余計なことをしゃべった、俺のイメージが悪くなる」と言って青山は激怒するかもしれませんが、まあい
いか。
昔昔、筑波で青山が原因不明の脳病で倒れていたとき看病に来た青山のカアちゃんが私に、「クボさん、よく気を付け
てね。この子には蛇が憑いているの。木に巻き付いたら離れない恐ろしい蛇よ」という忠告をくれました。その後青山
とは7年ばかり音信が絶え、ふたたび交遊するようになったとき青山に、
「昔、カアちゃんがこれこれの忠告を俺にくれた」と話すと、早速青山はカアちゃんに事の真偽を問うた。するとカア
ちゃん平然として「あの頃は黒い蛇が憑いてたけど、今は大丈夫。白い蛇が守っているわ」と息子の毒舌にみごと切り
返した由。
ところで現在、わがケータイ留守録を占有するのはアホ山通信のネタ、あるいは新しいアホ山留守録メッセージのみ。
少なくともケータイに関しては蛇の執念で巻き付かれている、とカアちゃんの忠告を思い返して私は納得したのであり
ます。
その20青山通信・賀正
MLのみなさま
おめでとうございます。新年早々、お目汚しの青山つーしんどす。以下FAX全文、一字一句変更なし
俺の賀状の文(註・黒枠で囲ってある)
|
眼の関係で、本年をもって
終わりにします。 今迄ありがとうございました。 |
これを読んで遺書と勘違いした人その他多くの解釈が乱れ飛んだので、何をやめるのかを左に記す
正解 年賀状
(ちなみに我が家へはまだ届いておりません。どこかへワープしたのでしょう。わが豚妻は「死ぬようなタマか、
青山さんは」と毒づいておりましたが...)
その21かえってきた青山通信・一度だけ
みなさま
ここのメンバーで俳句誌「未定」をご覧になっておられる方はほとんどいらっしゃらないと思うのですが、青山鉄夫
(旧「かばん」同人。いろいろ悶着を引き起こした。現在「未定」に戻り俳句に専念している。本名で俳句発表中)が、
次のケータイメールを送ってきたので、一回だけ、失礼します。
メール本文。(私あてのメールです)
「未定」八十二号所有者の為に俺の俳句の訂正を「かばん」MLに流してくれんか?よりによって自信作なんでなあ。
八句目と十句目
殺めては時空養殖して睡る
深海を菫にひらく昼の笛
が正しい。色々済まんなあ。(以上です。Jフォンのショートメールは字数制限あり、上の文も二回分割で送信されて
きました。青山、ロングメールをうつべく無駄な努力をたくさん重ねたが、ついにかなわず。その結果ショートメール
礫がぶんぶん飛んでくるのです)
「未定」82号の作品は以下の通り。(訂正前)
2
空色をささやく程にかたつむり
うつ伏せの明日あり這い上がるとろろ
石の眼の増殖寄せては寄せる星
盤石を繚乱と支えたり幽霊
三階をあふれて昼月の引火
木犀を厠に出し抜けて白帆
うねるうねる薔薇色の空白
殺めてはし時空養殖して睡る →ここです。「し」余分
風紋の蛇を割れたる光かな
深海を菫にひらく蛇の笛 →ここも。「蛇」が「昼」
相当な作品が揃っていると思いますが、まあ、ご本人がああいう人からねえ、、、
その22 残された「青山通信」
その1 ナルシス
ある日、ワシはクボに問うた。
「クボよ、何故オヌシはワシにそんなによくしてくれるのか?」と。
クボ曰く、
「青山の才能をかっているからだ」
それでワシは水仙になりかけたが、あやうく踏みとどまり再び問うた。
「その中にはワシの人間性も少しは含まれているのか?」
クボ、再び答えて曰く、
「それは一切ない」
ワシは今でも水仙になれずにいる。
その2 ポクッ
寝る前にテープに合わせて歌をうたっていたんだけど、そのとき突然冷蔵庫の映像が浮かんで爆発音をたてたので、へんだな、と感じて歌うのをやめてしばらく横になっていたんだけど、この暴発感は何かな、と考えているとそれは脳の血管が切れそうな感じに近いことに気付いた。
3年くらい前に、もう平気かなと思って、缶ビール2本飲んだあと眠ろうとして3時間ぐらい脳の血管が切れそうな感じで冷や汗を流し続けて、耐えて、わずかに切れたかもしれないが決定的な切れ方はせず、とにかく乗り切ったときの感じに近いことを思い出し、どうもヤバいなぁ、と思いながら横になっていたのであるが、そのうち金縛りがくるときの感じがして、それはいきなりやってくるのだが、今日のは違って徐々に体が痺れはじめたのでこのまま横になっていてはヤバいと思い、起きて灯りも点け、しばらく枕から起き直っていたが、この感覚ははじめてのことで実にこわいことだよなぁ。
どうせならいきなり死んでくれればよいけど、そういくとはかぎらないし体が麻痺してしまうことがある。こういうとき独身でなければいい、とはあんまり思わないので、もし大家族で20人ぐらい一緒に住んでいるなら、爺ちゃん、婆ちゃん、父ちゃん、母ちゃん、それにたくさんの親戚の叔父さん叔母さん、それに甥っ子姪っ子たちがたくさん住んでいる場合はある程度心強いんだけど、結婚している場合は相手の人に気の毒で、そういうときは離婚して「誰かのところへ行け」といった方がむしろ親切なぐらいで、しかしこの前はビールを飲み過ぎて血流が早くなったという明確な理由があったわけだが、今回のはそんな理由がないから何故だかわからないし、とにかくすごく怖い。
「鶴光のゴールデンアワー」でアシスタントをやっていた「お美和子さま」と鶴光の間合いが絶妙で、この前も鶴光が得意の「ぽくっ」という合いの手を入れた。
クボぉ、こんなふうにポクッ、と逝けたら理想的なんだがなぁ...
オレたちの青山通信もこのポクッという合いの手によって頓死成仏すればよい。そう思わないか?
クボぉぉ..ぽくっ…
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